賃貸管理・仲介に携わる事業者様が「家主・オーナー向けニュースレター(情報誌)」を戦略的に活用するために、改めて「ニュースレター」の基本について述べたいと思います。
一般的に「ニュースレター」とは、大小問わず事業主体や個人などが、独自で発行する、新聞や手紙、情報誌などの体裁をとった、
意志や情報を伝達、告知するための「オウンドメディア」の一つです。
企業が顧客や見込み客に向けたものから、政治家、学校、自治体、宗教団体、一族の長たるお爺ちゃんに至るまで、様々な事業者、組織、個人がニュースレターを発行しています。
そしてその形式も様々です。
狭義には「紙媒体」を言いますが、昨今はメールマガジンの体裁のもの、ファックス送信されるもの、PDFデータ形式のものから、SNSを用いたニュースレターがあります。
これらは「ニュースレター」と言うことができます。
マーケティング・ツールとしてのニュースレター
さて、これらニュースレターを発行する目的は、発行の主体によって様々です。
ですが、企業が発行する目的は、「社内報」を除けば、ずばりマーケティングです。
顧客が、ある商品、あるサービスの提供を受ける際、どの事業者(サプライヤー)から購買するかは、次の5つの要素から決定されます。
事業者としての「信頼感」
事業者の、その商品、サービス分野における「専門性の高さ」
事業者の「親しみやすさ」
価格(付随的サービス含む)
商品、サービスの質
提供される商品、サービスの、質、価格はもちろんですが、その事業者の「信頼感」「専門性の高さ」「親しみやすさ」、
これを重要視するところがポイントです。
事業者側も、意識的にも無意識的にも、このことを理解していてます。
たとえば、知人や既存顧客に、見込み客の紹介を依頼する際が良い例です。
知人や既存顧客による「紹介」は、その事業者についてまったく知らないユーザーが抱く、心理的な距離感を払拭してくれます。
「口コミ」も同様です。
また、一方で勉強会や会食、訪問などにより相手に会う機会を得て、人と人との関係性やコミュニケーションを図ることも同様でしょう。
広告宣伝物においては、「懇切丁寧!」「信頼の実績!」「この道〇〇年!」「〇〇のスペシャリスト!」と、
キャッチコピーを踊らせることも、顧客の購買決定のポイントを、事業者が念頭に置いているからこそでしょう。
こうして事業者は、自社が如何に「信頼感」「専門性の高さ」「親しみやすさ」のある事業者であるかを、様々な手段を用いて顧客に訴求します。
ところが、事業者の「信頼感」「専門性の高さ」「親しみやすさ」を訴求することは、そうそう容易いことではないという実情もあります。
今の時代、チラシに「信頼と実績」と書いても、ユーザーの心には、さほど響かないのではないでしょうか?
フェイス・トゥー・フェイスの取り組みを増やせば、「顔なじみ」は増えるでしょう。
そうすれば、確かに「信頼感」や「親しみやすさ」を感じてもらうことができます。
しかし、それには、膨大な労力、時間とコストが必要ですし、あまりにも属人的ともいえます。
そこで、様々な企業でマーケティング・ツールとして活用されるようになったのが、「ニュース・レター」です。
ニュースレターは、継続的にターゲットに届けることで、「信頼感」「専門性の高さ」「親しみやすさ」を、ムダ、ムラ、ムリなく訴求することを可能とします。
それゆえ、業種、業界問わず、多くの事業者で取り入れられる施策となりました。
またニュースレターは、もう一つ重要な役割を担います。
それは、顧客に対する「啓発」です。
語弊があるかも知れませんが、事業者は、顧客に「より良い選択」をしてもらうためには、顧客にユーザーとして「賢く」なって貰う必要があります。
顧客は「賢く」なければ、自社の商品、サービスの良さを理解できないのです。
換言すれば、自社の商品、サービスの良さを理解できるまで、顧客に勉強して貰う必要があるのです。
例えば、自動車販売で、顧客が「低排出ガス車」の良さを理解するには、その前提として自動車税の仕組みや、環境問題、低燃費のメリットなどを、「顧客が」知っている必要があるでしょう。
顧客は自ら勉強するか、事業者に啓発されて知識を得ない限り、「低排出ガス車」の良さを理解できないのです。
そしてこの必要性は、高度で複雑な商品、サービスであればあるほど高まります。
また事業者が「啓発」することで、顧客はその事業者に対し、「教えてくれる存在」という認識を持つようになります。
つまり、「啓発」することで、顧客はその事業者に対し、信頼感を抱くようになるのです。
このことは、ニュースレターが「顧客ロイヤリティ」を高めることを意味しています。
顧客ロイヤリティが高まれば、顧客生涯価値は高まります。
顧客はその事業者のいわば「ファン」となり、競合他社にスイッチ(乗り換え)することなく、長いスパンで何度も購買するようになるのです。
以上、これらのことが、多くの企業がマーケティング施策としてニュースレターなどのオウンドメディアを取り入れている、主要な理由です。
さて、賃貸管理業、仲介業も、極めて高度で複雑なサービスを提供する業といえます。
サービス領域は極めて専門的で、多岐に渡ります。
また複雑で、家主・オーナーに見えにくい業務も多くあります。
さらに空室対策など、オーナーとの「パートナーシップ」がなければ実現し得ないこともあるでしょう。
そのため、顧客であるオーナーに必要な「知識」も、一定以上に高度なものとなります。
それゆえに賃貸管理、仲介業においては、オーナーの新規開拓や、既に管理を受託しているオーナーに対するコミュニケーションツールとして、ニュースレターを取り入れている事業者様は年々増えています。
呼び方は、「オーナー通信」「オーナー向け情報誌」「会報」など様々ですが、ニュースレターは、賃貸管理、仲介業において、もはや一般的なマーケティングツール、欠かせない営業ツールといえるのではないでしょうか。
しかしながら、一方で他の業界に比べ、人材の流動が激しく、社内に知識、知見、経験を豊富に持ったスタッフを定着させにくいという傾向もあります。
そのため、ツールづくりの段で、自社の「専門性の高さ」を容易に訴求できないというケースも多々見受けられます。
また、戦略的にオーナーを「啓発」し、「信頼感」「専門性の高さ」「親しみやすさ」を訴求するには、不動産関連知識、情報収集能力はもとより、マーケティングのノウハウも必要になります。
少数精鋭の事業者様においては、ニュースレターの制作に費やすスタッフの労力や時間等を鑑みると、その必要性を理解はしていても、なかなか取り組めないマーケティング施策という実情もあります。